【好評発売中!】「新春・全国経営者セミナー」講演CD・DVD 

社長のための「コラム&NEWS」
今井繁之の 「上司のためのホウレンソウ」

第12話『無言の連絡はよくない』

 私は自分の行っているホウレンソウ(報告・連絡・相談)の研修で、「無言の連絡」はよくないという話をしている。
 「無言の連絡」という言葉はあまり一般的ではなく、私の造語といってよいかもしれない。

 「無言の連絡」とは何かというと、例えば、仕事をどこの会社に発注するかということで複数の会社から見積もりを取ったとする。お願いすることになった会社には当然連絡する。お願いすることのなくなった会社に「今回は御社にはお願いすることはなくなりました」と連絡するかというと必ずしもそうではない。
 なぜ連絡しないかというと、連絡するには多少の手間がかかるという理由が一番かと思うが、なまじ連絡すると、相手から「どうしてそのような結果になったのか、何とか再考をお願いできないか」と言われるのを嫌がるという理由もあるのではないかと思う。
 そして、連絡がいかなかければ結果はよくなかったと解釈して、あきらめてくれるだろうということで連絡をしない。これが「無言の連絡」である。しかし、見積書を作成するのだって、それなりに手間がかかっているのだから、当方の手間が多少かかってもなぜこのような結果になったかを伝えた方がよいと私は思う。

 「無言の連絡」を貫くと、よくよく察しの悪い人でない限り、今回は駄目だったんだ、仕方がない、あきらめようということになるが、そのあきらめの境地に達するまでに、
・なぜ連絡が来ないのか?
・慎重に検討していてこちらへの通知が遅れているのかもしれない?
・こんなに待っていても連絡が来ないのは駄目だっのかもしれない?
・それにしても駄目なら駄目と一言連絡してくれてもいいではないか?
・潔くあきらめよう
・こんな会社から次に仕事をお願いしたいと言ってきても今度はこちらから断ろう
・機会があったら、この会社の悪口を言ってやろう
 
 そこまで考えないかもしれないが、「無言の連絡」に徹するとボディブローのように悪い影響が出てくるので注意した方がい。
                                     
 採用活動ではこの「無言の連絡」が多いという話を聞いたことがある。
 私は採用の現場から離れているので現在の採用活動の実情に疎いところがあるが、人気企業には応募者が殺到するそうで、採用決定に至るまでにはいくつかの段階があるという。
 入社志望者はエントリーシートの書き込みから始まって、筆記試験、第一次面接から最終の役員面接までの間にいくつかの段階をクリアしなければならないという。途中のセレクトの過程で企業側から入社志望の学生さんに連絡が行くが、次の段階に進めない人には連絡はしないという話を聞いた。なぜ連絡しないのかと聞いたら、相当な手間がかかり、連絡しなくても「連絡がいかなければNGということです」と言ってあるので、当方の意思は分かってもらえると言う。
 確かに分かってもらえるかと思うが、いつ連絡が来るのかとせつない思いで待っている志望者の立場からするとこれは決して好ましいことではない。

 私の知人のN氏から聞いた話であるが、N氏には就職活動をしている大学生の娘さんがおり、娘さんは食品関係の会社に就職したいといくつかの会社にエントリーした。
 N氏はある日、娘さんから「お父さん、今後Aビールは飲まないで下さい」と言われた。「なぜ?」と聞くと「あの会社は面接の時、調子のいいことを言っておきながら何の連絡もよこさない。あの会社は誠意がないから飲まないで下さい」と言う。数日後、娘さんから「お父さん、Bビールも飲まないで下さい」と言われて、N氏は「分かった」と返事をした。さらに数日後「お父さん、Cビールも飲まないで下さい」「分かった」ということで飲むビールがなくなりそうになった。翌日、娘さんが「お父さん、Dビールは飲んでもいいよ」と言う。「Dビール社に採用してもらえたのか?」と聞くと、「いや、やはり駄目だった。でもDビールは誠意がある。採用には至らなかったが、連絡をくれた」と言う。
 「その連絡文書に『今回は採用枠が少なく、大変残念ですが今一歩で採用には至らなかった。他社でぜひ活躍して下さい』と書いてあった。A、B、C社は連絡をよこさなかったが、D社だけは結果は悪くても連絡をくれた。私はお友達にも話して、D社はいい会社だからビールを飲むならD社のビールを飲むようにと勧める」と言う。
 N氏の娘さんは極端かもしれないが、「無言の連絡」は将来の大切なお客様を失うことにもなり兼ねないので、何らかの方法で連絡した方がいい。
 
 連絡するべきなのに「無言の連絡」に徹すると、その会社の品格、経営者の品性が疑われる。
 卑近な例で恐縮だが、私共に大阪府S市にあるAという会社のKさんから「当社の社長が先生の『思考力を鍛える』という本を読んで、どうしたらこの本に書いてあるような思考力がつくか、著者に聞いてみなさいという指示が自分にあったので、ぜひ教えを乞いたい」というメールが入った。Kさんはそのために、わざわざ東京に出て来るというので、「それであれば私が関西の企業の研修に行く時に御社にお寄りしてお話をいたしましょう」ということで3月の初旬にA社を訪問することになった。
 通された社長室には京セラの創業者の稲盛さんのテープがいっぱい置いてある。社長は稲盛さんの信奉者みたいである。社長のMさんは50歳前後の方で、私は自分の行っている論理的思考法について、詳しくお話をして、「社員の皆様の思考力を強化したいのであれば、そのための研修があるので、それを社内で実施されたらどうですか。その際、現実に直面している課題を持ってご参加いただければ今、頭を悩ませている問題の解決になります」と話した。
 「4月あるいは5月にお願いしても大丈夫ですか?」と言われて、「ふさがっている日程もあるが、いくつか候補を上げていただければ対応します」と返事をして、その日は辞した。
 ところが3月末になってもA社から何も言ってこない。東日本大震災の影響があって関西でも忙しくしているのかもしれないと考えて、M社長のメールアドレスに「その後どうなりましたか?」というメールを入れたが、このメールは「先方の受信のキャパを超えている?ので送信不可ということになりました」という表示が出た。
 こんなことは初めてで、変なこともあるものだと思ったが、M社長は自分のパソコンがそのようになっていることに気付いていないのだろう、私のメールはともかくとして、ビジネス上の連絡メールが入ってもこの状態では貴重なビジネスチャンスを逸する恐れもあるから教えてあげた方が親切だろうということで、手紙で知らせてあげることにした。
 手紙に拙著を2冊入れて、「その後どうなりましたか」と、「メールが使えない状態になっています」ということをお知らせしたがM社長から何も反応がない
 しばらくしてM社長にメールすると前回と同じ症状で送信は不可である。
 よせばいいのに最初にメールを送ってきたKさんに「その後、どうなりましたか?」とメールしたがこれもまったくなしの飛礫である。
 これでこのA社という会社は思考力を強化する研修を行おうという気持ちがまったくないことが分かった。
 最初から研修を行おうという気持ちはなく、ただ私の話だけを聞きたかったのか、それとも研修料金の高さにびっくりしたのか、先方から何の連絡がないので、A社側が何を考えているのか分からない。それなりの事情があって、研修を実施するのは止めようということになったに違いない。
 そうであれば、「お手数をかけましたが今回は諸般の事情で研修は行いません。悪しからず」と一言連絡していただければ、こちらも一応納得したが、今回のように何も連絡がないと「蛇の生殺し」のようなもので大変不愉快であった。
 今回のA社の対応は正しく「無言の連絡」であった。
 取引先にも、このような「無言の連絡」を貫いていたら、この会社の行く末はどうなるかなと余計な心配をしてしまった。

 たまたま卑近な例として自分の体験を記述したが、この類いの「無言の連絡」は多いのではないかと思う。
 ここまではひどくはないが、連絡をくれても罰が当たらないという例はいくつもある。 通信手段が多様となり、Eメールで簡単に連絡ができるのにそれをしようとしない。  仕事が忙しくて、なかなか手が回らないという面もあると思うが、どちらかといえば人間の品性が落ちてきてしまったのではないかという気がする。
 「礼で始まり、礼で終わる」という教えもあるので、どこかで、何かの関係でお世話になることがあるかもしれないので「礼」を欠かさないようにするべきである。

 採用活動もそうだが、それ以外の社外とのお付き合いの中で、連絡をした方がよいのに連絡を怠っていると、会社の品格が疑われ、回り回って自社の不利益になるので、経営者の皆さんには自社では「無言の連絡」をして無用な軋轢(あつれき)を生んではいないか総点検をすることをお勧めする。


バックナンバー

筆者紹介

画像 講師写真

講師 今井 繁之

シンキングマネジメント研究所代表

社内・お客様に「報告・連絡・相談」を徹底している会社は、この逆境にあっても、業績が長期安定することを長年の指導経験から実証。
リコー・ソニーに勤務時、論理的問題解決法であるKT法の社内指導を手懸ける。その後、1991年、シンキングマネジメント研究所を設立し独立。指導実績は、キーエンス・シャープ・コープこうべ・NTTデータ・リクルート・伊勢丹…等の企業で、年間1000人を超える社員・幹部に独自の問題解決法TM法を教える。 特にeメール時代の「報告・連絡・相談」の指導は大好評。著書「頭を使ったホウレンソウ」、DVD「営業マンの報告・連絡・相談」(弊会AV局刊)

筆者の関連セミナー

シリーズトップへ戻る 経営コラムのトップへ戻る

画像 ページTOPに戻る