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社長のための「コラム&NEWS」
大久保一彦の“流行る”お店の仕組みづくり

34軒目 “流行る店”ではなく“飽きない店”を


“流行る店”ではなく“飽きない店”を

目指した繁盛店

「酒と人情料理 いたる」(石川県・金沢市)




金沢の繁華街片町に面して柿木畠というお洒落な店が軒を連ねるエリアがある。この中で若い頃から鬼才を放っているオーナーがいる。金沢でも屈指 の繁盛居酒屋「酒と人情料理 いたる」石黒格(以下いたるさんと言う)さんだ。

 修行していた割烹料理店の主人が25歳のときに独立したという話を聞いていたるさんは「それよりも若く独立しよう」と堅く決意したそう だ。



 いたるさんが23歳11ヶ月ころ、柿木畠の雑居ビルの2階に小さな居酒屋をオープンした。時は昭和63年バブルの真只中であった。当時の金沢 で居酒屋というと「おでん屋」が一般的、あとは大手大衆居酒屋チェーンで、女性が気軽に楽しめる今の居酒屋のスタイルの店がなく、そのタイプに位置づけ店 は賑わった。

 3年目になって知人の紹介で現在の「いたる本店」のある場所へ移転した。この3年の間で今の「いたる」の店作りに到達するのであるが、それに は失敗と気づきがあった。
 「一軒バーを経営して一年で閉めたんですよ」私のインタビューでいたるさんはどこの経営誌でも語らなかったことを切り出した。

 いたるさんが閉めた「酒バー」というバーはとても斬新なコンセプトだった。開店と同時に大流行した。しかし、3ヶ月もするとあれよ、あれよと いう間に客足は遠のき、閉店に追い込まれた。

 同時期に商売の師匠と崇める先輩が斜め向かいにコンクリート打ちっぱなしのおしゃれなバー「フーズバーボチボチ」したが、やはり同じように開 店と同時に大流行したのだが、店を閉めた。

 いたるは店を閉めてから東京にふたたび視察に行った。そして、開店のためにベンチーマークに行った青山・渋谷・六本木の大流行の店もしばらく して行くと残っている店のほうが少ない事実に気づいた。

 「残っていたお店は昔から30年、40年と商売されている老舗の居酒屋さんばかりでした。」そして、いたるさん、「おしゃれな店は鮮度が重 要。鮮度を保つのがたいへん。従って、流行していて派手だが多くの店の命は短い。長く根を張って商売するならば、ああ、そうだったんか!“飽きない店作 り”が大切なんだなとこの時はじて思いました」と言います。

 今年で21周年を迎えるにあたり格さんはこう語る。
 
「”飽きないスタイル”の中にほんの少し遊びのエッセンスを加えることでお客様は喜んで下さるんです。」



 今でこそ「地産地消」という言葉が出回っているが、「いたる」では創業当時から地のものを提供していた。魚は新湊、宇出津、金沢の漁港から直 送される「キトキト(富山弁で”新鮮な”という意)の魚」をつかう。

 野菜は金時草、五郎島金時、小阪れんこんなど加賀野菜が中心。加賀野菜以外にも、夏にはだだ茶豆や、春から夏にかけては北海道産の白アスパラ など厳選した旬の素材。金沢にしては少し高めの客単価4~5000円だが、地元の方も、出張や旅行で金沢を訪れる方も「北陸の旨い魚と旨い酒」が味わえる と大評判だ。業者や生産者との付き合いも大事にしている。

 こだわりがみえるのは料理だけではない。

 いたるでは日本酒を蔵出しミニタンク(いわばビールで言えば生ビールのようなもの)で提供している。そのきっかけをいたるさんは、「平成12 年頃、ワインブームで日本酒がそっちに流れていった時期がありました。日本酒の売り方を変えたらいいんじゃないかなって思ったのがはじまりですね。」と言 います。

 「酒蔵見学をした時に感じた出来立てのタンクから飲む日本酒がものすごく美味しかった。“なんで瓶詰めしてこれと同じような味はないんやろ う?”」と疑問に思ったそうだ。生ビールのように日本酒も蔵直で、タンクで提供できるんではないかと考え酒屋に相談したところ、当時営業に力を入れていた 天狗舞さんにつないだ。

 ところが天狗舞の営業マンは「いたるさんとこは他の店と比べたら日本酒もでているんだから別にそんなことをしなくてもいいんではないですか」 と乗り気ではなかった。しかし、いたるさんは食い下がらなかった。

 「日本酒を飲んでいる世代は40代以上の方だけですよ。僕より下の代の20代の方々は日本酒を飲まずワインを飲んだり「酎ハイないの?」なん て言ったりするんですよ。
 ビールのドライ戦争が10年前にあったのを覚えてます?アサヒがスーパードライを出しキリンもサッポロもこぞってドライを出した。それで当時 の20代の方たちがビールのドライを飲むようになり定着したんです。その方たちは今、30代で一番ビールを飲む世代ですよね。

 日本酒だって今の20代に何かをアクションをしておかないと日本酒を飲む世代がいなくなっちゃいますよ」と切り替えしたそうだ。

 日本酒を飲む世代が育ってほしい、育つためには自分が酒蔵で感じた日本酒の美味しさや芳香な香りの感動を知ってもらう“入り口”を作る商品が 必要だといたるさんは感じた。

 「お客様を育て、一緒に成長していく」

 それがこれからの時代のキーワードだ。いたるに行けばそれがわかる。金沢に行ったらぜひ足を運んでみてほしい。




●店舗情報  「酒と人情料理 いたる」(本店)
住所 金沢市柿木畠3-8 電話076-221-4194
営業 17:30~23:30(23:00LO)  
定休 日曜(日曜・祝日連休の場合は月曜定休)
席数 カウンター17席 座席25席

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筆者紹介

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講師 大久保 一彦


日本の将来のために創業・第二創業・イノベーションを支援する有限会社
代表取締役

10,000店舗を訪問、「反映の仕組み」を体系化 日本、フランス、アメリカなど1万店舗を実際に食べ歩き、 多くの飲食経営本を著す。 飲食店のもうけの構造を知り尽くした現場コンサルタント。 日本、アメリカ、欧州、1万店舗以上の店舗を訪ね、繁盛の秘訣を体系化し、「オオクボ式繁盛プログラム」を開発。損益分岐点を下げる仕掛けでは、月商400万円売れないと成り立たなかった店を月商180万円でも利益が出るよう指導し、成功させた。 (株)グリーンハウス時代に「新宿さぼてん」を惣菜店多店舗化に成功。独立後は、ハイディ日高、和幸、東和フードサービスなどの新業態開発やメニュー開発などを手掛け、地域密着店、老舗料亭やフレンチ・イタリアンの高級店等の運営から集客法までを一元的に指導。経営者の信頼を得る。 「行列ができる店はどこが違うのか」など著書24冊。

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