社長のための「コラム&NEWS」
大久保一彦の“流行る”お店の仕組みづくり

9軒目 「開店前から行列ができる焼肉屋」


「益一」(京都・吉祥院)


 京都におすすめの焼肉屋がある。東寺にある“益市”だ。客単価4300円、50席くらいのこの店、BSE、飲酒取締りなど世の中の逆風もなん のその、創業以来約9年、ずっと売上を伸ばし続けている。


 今月は、私の事務所で発行している繁盛店の秘訣をご紹介する“夢―商通信”で敢行した“益市”の国本社長の取材をまとめながら、そのポイント その秘密をさぐってみることにしよう。


 京都で焼肉と言うと大阪と違い、高いとかおいしくないとかいうイメージを持っている人も多いと思う。そんなイメージを払拭したのが、“益市” が伸び続けている原因なのかもしれない。


 “益市”は京都駅のすぐ南に位置する東寺駅の商店街にぽつんとある。国本社長は人が出さない“けったいな”場所に敢えて出店する。駐車場も敷 地に隣接しているわけではない。しかし、開店の18時をすぎると、1時間待ちはざらだ。そして、お客様もなんのためらいもなく入り口で次の番を待つ。日曜 日となると17時10分には満席になり,夜10時くらいまで一時間半から二時間待ちが続く。



 “益市”には四番バッター商品がない。以前、私は、四番バッター商品による現状打破を著書でお伝えした。しかし、“益市”をそんなもが必要な いのではないかとさえ感じる。


 国本社長によれば、お客様の状況や会話や表情などでお客様の要望を汲み取り、各テーブルをデザインして、「やっぱり“益市”に来てよかった。 また来ようと」思わせることが大切で、強烈な四番バッター商品やインパクトのある接客は必要ないという。


 確かに、立地に恵まれた場所で、一見客ばかりを相手にするなら、印象に残る商品やサービスはお客様に忘れられないために重要だ。しかし、商圏 が薄い立地において、商売を長いスパンで考えた場合、おしつけがましい強烈なやりかたは繰り返し来店を考えると飽きにつながる。その点をよく国本社長は考 えている。



 国本社長が話された誕生日のサービスが印象的だ。「企画をがちがちに考えて予約をしてもらいデコレーションケーキを用意したり、花束を用意し たりするのもいいでしょう。でも、そんなケーキでなくても、肉をデコレーションケーキ風に盛り付けをしたり、厨房にある食材を使ったりして、お客様にお誕 生日を言われなくても、会話の中から場を察し、おもいやりをさりげなく表現するほうがよく来る店だと嬉しいですよ」





 ここしかないサービスでなく、どこの家庭でも家族ならできることをする。そんな思いやりがお客様を“益市”は違うと思わせるのではないだろう か?今日は、ちょっとだけ食べたいなら、そういう食べ方、今日は送別会でふんぱつしたいなら豪華な食卓、気軽な誕生日なら、そういう食卓をコーディネート することが大切なのだ。



 そう考えると、永く続く繁盛店には戦略的なメニューブックはいらない。私は、メニューブックの作り方で売上が上がると思い続けていたが、どう も、長い商売を考えると決していい方法でないことを思い知る。



焼き肉屋「益一」
営業時間 PM4:00~PM10:30(10:00ラストオーダー)
住所 京都市南区吉祥院西浦町33
TEL 075-661-7057
http://www.masuichi.jp/honten/index2.html

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筆者紹介

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講師 大久保 一彦


日本の将来のために創業・第二創業・イノベーションを支援する有限会社
代表取締役

10,000店舗を訪問、「反映の仕組み」を体系化 日本、フランス、アメリカなど1万店舗を実際に食べ歩き、 多くの飲食経営本を著す。 飲食店のもうけの構造を知り尽くした現場コンサルタント。 日本、アメリカ、欧州、1万店舗以上の店舗を訪ね、繁盛の秘訣を体系化し、「オオクボ式繁盛プログラム」を開発。損益分岐点を下げる仕掛けでは、月商400万円売れないと成り立たなかった店を月商180万円でも利益が出るよう指導し、成功させた。 (株)グリーンハウス時代に「新宿さぼてん」を惣菜店多店舗化に成功。独立後は、ハイディ日高、和幸、東和フードサービスなどの新業態開発やメニュー開発などを手掛け、地域密着店、老舗料亭やフレンチ・イタリアンの高級店等の運営から集客法までを一元的に指導。経営者の信頼を得る。 「行列ができる店はどこが違うのか」など著書24冊。

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