社長のための「コラム&NEWS」
大久保一彦の“流行る”お店の仕組みづくり

104軒目 金沢で市場に一番近い鮨屋

 私の定番、日本経営合理化協会主催の店舗見学会をスタートしたのは、もう十年以上も前の話です。

 初回見学会の直後、当時、参加者の中で、金沢から、目白にありました私の事務所にわざわざいらっしゃった酒屋さんがおります。その酒屋の中川忠博さんは、挨拶をするやいなや、「うちと業務提携してください」とおっしゃいました。私は、いきなりのよくわからない業務提携の依頼に驚きました。

 そして、その後、雑談をしながら、「酒屋が生き残る方法として、値段交渉をするのは、業績がよくならないからだ。業績のいい店を増やして値引きが不要になるようなお店を増やしましょう」という結論に至り、その解決法として金沢で勉強会を始めることになりました。

 勉強会を始めて十数年。参加者も徐々に増え、開業された人もたくさんおります。この勉強会を通じて、開業の失敗する人も出ず、厳しかった人でもなんとかやっていけているように思います。勉強会参加者の中には私の事務所とご縁をいただいた方も多く、金沢は私にとって、とてもお客様の多いエリアにもなっております。

 今回は、その中から、ホームページを制作させていただいた『すし処大敷』をご紹介しましょう。


 私はホームページを制作するにあたり、現地に数日滞在して『すし処大敷』オーナーの金田羊一さんと行動を共にして金田さんの強みを見極めることにしました。

 まず、金田さんのご実家は農業を営み、野菜やお米を作られています。その中でも、お米と蓮根は自信があるということで、まず、30分くらい離れた農場を見学しました。加賀蓮根の多くは、田んぼで作っておりますが、金田さんの田んぼで育てています。田んぼで採れた蓮根はほくほく感が違います。沼で作る関東の蓮根が水っぽく感じるくらいです。

 早速、当時80歳くらいだった金田さんのお父さんと一緒に蓮根を掘ってみました。これが、とても大変です。水を含んだ土は重く、また、雑に掘って蓮根を傷つけてはいけませんので、なかなか掘り出すことができません。しかし、金田さんのお父さんはどんどん収穫していきます。農家さんの底力を痛感しました。


 一方、金田さんの奥さんの実家は金沢港にも金沢中央卸売市場で力のある仲卸です。蟹や海老はまず、深夜10時~1時に金沢に入ります。その後、金沢の中央卸売市場に運ばれ、翌朝セリにかけられます。金沢中央卸売市場は蟹が集まることで有名です。金沢港はもちろんですが、北陸の新潟や山形、山陰地方などからもやってきます。

 まず、深夜、金田さんの店から近い金沢港を視察しました。金田さんには船からの荷の状況が届いており、「今日は少なめだ」などの情報が入ります。それでも私と金田さんが到着したときには、蟹がたくさんありました。その中から身がパンパンに詰まった蟹を選びます。


 金沢港に上がる蟹の最上のものが加能蟹。そして、深場の紅ズワイがあります。

 紅ズワイとズワイガニの違いは生息地帯です。紅ズワイは1,000メールくらいの深場にいます。そのため漁は篭漁です。篭漁の難点は篭を落として引き上げるまで日数がかかる場合があることです。餌が食べられないとやせてしまいます。一方、ズワイガニは、500メートルくらいなので、底曳き網をします。500メートルと1,000メーターでは餌が違うようで、DNA上は同じでも異なる蟹の性質が出るようです。

 その他にも、香箱蟹や甘エビ、そして北陸らしいガス海老などがあります。


 翌朝、金沢中央卸売市場を見学しました。金沢の人はマカジキが好きなために、マカジキの解体を見学しました。


 さて、実際に店舗で実食することにしましょう。『すし処大敷』の蟹のシーズンに人気なのは「加能蟹満喫コース」です。

 まずは、いきなり加能蟹の刺身から始まります。濃厚な甘さがあります。


 金田さんの加能蟹はこの奥深い甘さとうまさがあります。これは産地で食べていないとわからないと思いますが、蟹は船の上や産地、市場、業者の生け簀にとどまることも多く、水ぶくれしている上、甘さも経時劣化しているケースが多いです。金田さんのブラックボクスは、先にお話しましたように、船から漁の状況が報告され、港にあがった蟹を選ぶことができることです。

 『大敷』にはこの濃厚な蟹にあう『菊姫』のお酒を三つ用意しています。


 まずは、「鶴の里」のぬる燗がおすすめです。一番、味わいの濃い「鶴の里」が蟹に負けずよく、しゃぶしゃぶでキレのよい甘さがある「金剣」、そしてあっさりした「先一杯」へ、通の蟹の食べ合わせです。

 続いては、加能蟹のしゃぶしゃぶです。しゃぶしゃぶしてくに従って、濃厚なスープができていきます。ねっとり系で濃厚な蟹味噌を合わせてたべると、また、これが美味しいです。


 箸休めは香箱蟹の酢の物です。豪華ですね。


 いよいよメインディッシュの陶板焼きです。他お店ではおいしいと感じなくなる陶板焼きの蟹で、これは金田さんの店ならではです。〆の酒はあっさりということで先一杯です。


 また、箸休めが出てきて、蟹の鮨です。


 最後は、蟹の雑炊です。しびれます。


 名物のガス海老の巻物もとてもおいしいです。
 ぜひ、『すし処大敷』を訪れてみてください。


すし処大敷
石川県金沢市西念3-5-24
電話 076-261-0041

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筆者紹介

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講師 大久保 一彦


日本の将来のために創業・第二創業・イノベーションを支援する有限会社
代表取締役

10,000店舗を訪問、「反映の仕組み」を体系化 日本、フランス、アメリカなど1万店舗を実際に食べ歩き、 多くの飲食経営本を著す。 飲食店のもうけの構造を知り尽くした現場コンサルタント。 日本、アメリカ、欧州、1万店舗以上の店舗を訪ね、繁盛の秘訣を体系化し、「オオクボ式繁盛プログラム」を開発。損益分岐点を下げる仕掛けでは、月商400万円売れないと成り立たなかった店を月商180万円でも利益が出るよう指導し、成功させた。 (株)グリーンハウス時代に「新宿さぼてん」を惣菜店多店舗化に成功。独立後は、ハイディ日高、和幸、東和フードサービスなどの新業態開発やメニュー開発などを手掛け、地域密着店、老舗料亭やフレンチ・イタリアンの高級店等の運営から集客法までを一元的に指導。経営者の信頼を得る。 「行列ができる店はどこが違うのか」など著書24冊。

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