社長のための「コラム&NEWS」
大久保一彦の“流行る”お店の仕組みづくり

101軒目 次の時代のキーワード安心でなく安全を実践する畜産家

 今月は但馬を代表する畜産家の上田伸也さんの牛を紹介しながら、そのブランド牛“但馬玄”が食べられる兵庫県美方郡香美町のレストラン『石楠花(シャクナゲ)』を紹介しましょう。

 上田畜産は平成3年に繁殖牛12頭でスタート。上田氏は幼少より牛が好きで、良牛生産が夢だったそうです。そのため販売した子牛の売上全てを素牛導入に注ぎ込みながら、平成14年には繁殖牛100頭・肥育牛の飼養もスタートし、但馬地域においしては新しいスタイルとも言える繁殖・肥育の一貫経営をスタートしました。そして21年上田畜産を設立。但馬地域、いや全国でも先端の生産者であります。
 町の子牛品評会はもとより兵庫県畜産共進会では最高位の名誉賞を5回受賞。5年に一度開催され、和牛のオリンピックと言われています全国和牛能力共進会にも三度出場して三度とも優秀賞を受賞するすばらしい牛を育てあげています。
 まず、上田さんの牛の特徴を言うと安心安全でしょう。


 2010年前後までは、上田さんは抗生剤を使っておりましたが、どんどん抗生剤が強くなる一方、抗生剤が効かなくなってやめるしか選択肢がないことに気づき、合成の抗生剤の投与をやめたそうです。抗生剤をやめると牛がばたばた死んでいったとおっしゃいます。

 現在、新生牛の病気回避のために母体に接種していたワクチンや生後2ヶ月で摂取していた呼吸器系疾患のワクチンをやめました。現在、生後14か月まで二種類の天然系抗生物質(ペニシリンなど天然由来のもの、エンゲマイシン)を与えるものの、14か月以降は、抗生剤を一切与えていないのです。

抗生剤についてはこちら

 確かに、食品の安全が叫ばれるにも関わらず、ヨーロッパで使用が禁止されているモネンシンなどが使われています。三年前、厚生労働省は餌に抗生物質を混ぜることを許すようになりました。このことは、意外と料理人や専門家はこのことについて知らない人が多いと思いますがこれにより、モネンシンが検出される肉牛が顕著になっているようです。
 米国では『Shake Shack』が抗生物質フリーの肉を使ったことを打ち出し大成功したように、日本においてもこのじゃぶじゃぶ抗生物質の問題は大きなテーマになるでしょう。

 そして、同行した畜産家の綿田さんが驚いたのが、刺しを入れるためにビタミン調整を上田さんは実施していないことです。基本的に、刺しを入れるために毎日採血して、ビタミンの欠乏症をお越し目が見るか見えないかにします。目が見えるか見えないかもある意味、異様ですが、刺しを入れるテクニックですね。ちなみに、この採血自体も牛にはストレスがあるそうです。

 さらに上田さんが凄いのは飼料です。従来のえさはトウモロコシを主体とした、大豆と大麦の配合脂肪でした。これだと飽和脂肪酸が組成されます。そこで上田さんはこちらをそば粉、そば殻、米糠、ごま油粕の配合した独自の飼料セサミヘスフィールドに変更しました。(下記の写真)


 必須アミノ酸の含有量が高く、Ca、Mg、セレン、亜鉛のミネラル分の微量要素が多量に含有し生体の生命維持に欠かせないものを含んでいいます。このような飼料を与えることで、成長に必要な栄養素・アミノ酸を得ることができ、生体細胞を強める働きも充足でき、健康に育つ一役を担います。育った牛は不飽和脂肪酸を多く含有して、あっさりした脂の牛肉となるのです。

 さらに、驚くのは、飼料が、Non-GMO。凄いとしか言いようがありません。しかも、毎月、本当にNon-GMOかどうか検査機関で調べているそうです。


 そう、自分以外信じない、肉を食する末端のお客様のために自分で確かめる。国の基準でなく、自分の責任において実施する、まさに、これからのキーワードですね。

 そして、上田さんは牛の健康を考え暖かい牛床を実現するために、牛床におがくずを敷くのをやめ、“戻し堆肥”にしました。上記の写真が戻し堆肥です。戻し堆肥は、左の写真のように堆肥の消毒は、80度の高温を維持して殺菌し、消毒は一切行わないそうです。また、ハエの駆逐も一切しないという徹底ぶりです。この堆肥の牛床のおかげでふかふかで冬でも暖かいそうです。
 最終段階の堆肥には放線菌ができて白くなっております。当然ですがこの堆肥から抗生物質や化学物質は一切検出しないそうです。これも凄いですね。


 愛情をかけて育てるおかげで上田さんの雌牛は36か月で700kgにもなるそうです。小さいことで有名な但馬牛ですので、これは驚きです。


 ということで、お昼後は、上田さんの牛、“但馬玄(たじまぐろ)”が食べられる『石楠花(シャクナゲ)』に移動しましょう。


メニューは下記のような感じです。まず、ウリがこちらの「上田畜産の但馬牛ローストビーフ丼」です。もちろん、“但馬玄(たじまぐろ)”を使用しています。


 メニューはいろいろあり、さすが小商圏の店、地元の人の幅広い利用動機にも対応していますね。


 せっかくここまできたら、フルスペックの商品でしょう。というわけで、上田さんの“但馬玄”のローストビーフ丼を注文することにします。女性向けにピクルスのセットがついたセットもありますが、「“但馬玄”を満喫したいならこちらしかないでしょう」と同行した大阪の『万両』なる焼き肉店を経営するオーナーの滝本さんは言います。

 “但馬玄”のローストビーフ丼が来ました~。サラダの上にのせたローストビーフ、塩とマスタードとわさびとタレがついています。ご飯は別盛りです。


 まずは塩でいきましょう。
 「!」これはうまい。 肉の味がしっかりしています。思わず、滝本さんと目を合わせます。タレもおいしい。でも、塩ですね。
 結構、ボリュームありますが、あっという間に完食です。なんか、量が物足りなくも感じなくないというか、もっと食べたいというか…。これは、上田さんの牛の融点が12度~13度で不飽和脂肪酸の組成が70%もあるからなんでしょう。いやー、凄いです。

 最後に、最近オープンしました上田さんのブティクにいきましょう。


 屠殺された牛はこちらのバックヤードで処理されます。


上田さんは本文に出てきました“但馬玄”と言う商標を取得して飲食店はもとより高級スーパーに提供しています。基本は半丸。パーツ売りはしません。また、問屋流通も排除する徹底ぶりです。

石楠花(シャクナゲ)
兵庫県美方郡香美町小代区神水739-1
電話 0796-97-2687
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筆者紹介

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講師 大久保 一彦


日本の将来のために創業・第二創業・イノベーションを支援する有限会社
代表取締役

10,000店舗を訪問、「反映の仕組み」を体系化 日本、フランス、アメリカなど1万店舗を実際に食べ歩き、 多くの飲食経営本を著す。 飲食店のもうけの構造を知り尽くした現場コンサルタント。 日本、アメリカ、欧州、1万店舗以上の店舗を訪ね、繁盛の秘訣を体系化し、「オオクボ式繁盛プログラム」を開発。損益分岐点を下げる仕掛けでは、月商400万円売れないと成り立たなかった店を月商180万円でも利益が出るよう指導し、成功させた。 (株)グリーンハウス時代に「新宿さぼてん」を惣菜店多店舗化に成功。独立後は、ハイディ日高、和幸、東和フードサービスなどの新業態開発やメニュー開発などを手掛け、地域密着店、老舗料亭やフレンチ・イタリアンの高級店等の運営から集客法までを一元的に指導。経営者の信頼を得る。 「行列ができる店はどこが違うのか」など著書24冊。

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