【夏季・全国経営者セミナー】事業家・若手起業家…35講師登壇、経営者700名が集う3日間 

社長のための「コラム&NEWS」
大久保一彦の“流行る”お店の仕組みづくり

95軒目 デフレの潜在的願望

 よく地方から視察にいらっしゃった方から、「東京はなんか違いますね」とよく言われます。確かに下図で見ていただくとわかりますが、5000万円以上の金融資産を持つ人は315.2万世帯+95.3万世帯+5.4万世帯で415万世帯もあり、この層が東京や都市部に集中しています。東京と地方の景況感に格差が広がっているのは、アベノミクスよって給与所得者が潤ったのではなく、間違いなく、インバウンドの増加と資産家の資産インフレによる景況感が大きいでしょう。これらの富裕層を主体に、客単価2万円前後のレストランが活況で、中には一年以上も先まで埋まっているケースや、京都から最終電車ののぞみがいっぱいになるという摩訶不思議な現象が起こっています。確実に金融資産を持つ層、すなわち、富裕層は拡大しています。

純金融資産保有額の階層別にみた世帯数(2013)


(参考)
https://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/minkan2013/pdf/001.pdf
https://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/shinkokuhyohon2013/pdf/gaiyo.pdf



 一方、労働者の所得はバブル崩壊後下落傾向が日増しに進んでいます。人口減少、生産年齢人口の激減も大きいでしょうが、可処分所得がとても低く、節約志向が高くなっているのも事実でしょう。

(参考)給与所得の分布

階層 男性
(単位:万人)
男性割合
(%)
女性
(単位:万人)
女性割合
(%)
100万円以下 88.4 3.2 333.1 17.6
100万円台 205.1 7.5 493.3 26.1
200万円台 370.3 13.4 411.7 21.8
300万円台 515 18.7 294.3 15.6
400万円台 471.7 17.1 168.4 8.9
500万円台 357.1 13 90.2 4.8
600万円台 232.4 8.4 41 2.2
700万円台 164.5 6 23.4 1.2
800万円台 110.3 4 12.5 0.7
900万円台 69.8 2.5 7.2 0.4
1,000~1,500万円 124.3 4.5 12.5 0.7
1,500~2,000万円 26.7 1 2.5 0.1
2,000~2,500万円 7.5 0.3 1 0.1
2500万円超 10.4 0.4 0.9 0
  2753.5   1892  

統計元:国税庁 平成25年 民間給与実態統計調査結果


 また、消費税増税後の値付けで市場環境ががらっと変わりました牛丼チェーンの下記の業況を見るに、日常マーケットの節約志向が強いことは確実に言えるでしょう。
2014年4月に消費税率が8%となって、『吉野家』は牛丼(並)をまず300円に値上げし、同年12月には380円に値上げしました。『すき家』は増税後牛丼(並)を一旦270円に値下げした後、2014年8月には291円、15年4月に350円へ値上げをしました。一方、『松屋』は280円の牛めし(並、味噌汁付き)を2014年4月にを290円に改定と増税分の転嫁にとどめました。しかし、同年7月に、関東一都六県では「プレミアムめし」に切り替え、380円としています。
 施策の違いがもたらした結果は、牛丼チェーン大手3社の15年11月の業績に顕著に出ました。『吉野家』が前年比マイナス7.3%、『すき家』が前年比マイナス0.6%である一方『松屋』は前年比プラス3%で推移しています。
 私は、牛丼は、税込300円を超えると気軽さが減り利用動機が大きく変わるという商品特性があると考えています。ちなみに、『ほっかほっか亭』ののり弁の価格は税込340円で『ほっともっと』ののり弁は税込350円で牛丼(並)380円はこれらの売価を上回った値付けであることも大きいといえるでしょう。そのため、一都六県以外が牛丼(並)290円である『松屋』がその需要を吸い上げ、顧客価値を一社で吸い上げているという仮説が成り立ちます。
 牛丼のような日々のランチ需要に応えるビジネスモデルなら、利用頻度が高く日常性が高いニーズを想定します。その上で、弁当・店内での利用回数を最大化する単価設定と年間利用回数を考えないといけないのです。

 こんな時代に注目の店がオープンしています。『原価率研究所』という新潟発祥のカレー専門店です。「より、多くの人に喜んでいいただく」という理想像のもと、200円のカレーを提供する新潟発祥の店は東武線竹ノ塚駅からお竹橋通り沿い徒歩10分ほどの場所に店はあります。店のそばには駐車場の大きなセブンイレブンがあるものの、駐車場もなくぽつんと店がある印象です。店内左に注文するカウンター、本来は立ち食いにするためか、パントリーを囲んでカウンターがあります。ただ、今は注文待ちの人で行列しているため、そこでは食べることができません。パントリーのガラス面には、店を開業したいきさつが書いてあります。店内は簡易なテーブル椅子があります。卓数3、席数6で少ないですね。これも無駄な経費を省いたということなのでしょうが、牛丼屋のような“快適性”はありません。したがって、ごったがえしている今の現状だと、店内で食べることは難しい場面もあるかもしれません。
 より多くの人に喜んでいただけることということでいきついたのが200円カレーだそうで、そのために、人件費など様々な無駄を省いたそうです。
 カレーは600gあるそうで、米は新潟産、玉ねぎや鶏肉も国産だそうです。ボリューム満点です。味は“ふつう”。実際、ホームページには、レストランの味ではなく、ふつうの味にしたと書いてあります。個性を減らすことで商品としてのマイナス点を削除して多くの人に受け入れられるようにしているのでしょう。味付けは塩味が強めに感じます。一般的なチェーン店のカレーの主原料はラード、小麦粉、塩、旨み調味料(味の素など)です。もしかしたら、炒めた玉葱を多くして旨み調味料を抑えていることに起因するのかもしれません。いずれにせよ、600gのポーションも相まって、満腹中枢を刺激します。
 この店を見ていて思うことは、200円の売価となると面白いのは、カレーをまとめ買いする人が多いことです。牛丼戦争のころ、おもち帰りの牛丼も購買層を広げ、家庭の主婦層に広がった結果、「自分のお弁当」というコアの需要から、まとめ買いに広がり、客単価が上がったことを思い出します。 しかし、そのため、提供に時間がかかり、いわば、“らーめん二郎本店”と同じような行列状態になり、気軽にという部分が大きく後退しているように見えます。実際、私は10人待ちで25分くらい提供にかかりました。
 しかし、これくらいのカレーが200円で提供されるなら、ありですね。



原価率研究所 竹ノ塚店
東京都足立区東伊興3-4-16
電話 03-3855-2722
→食べログ内ページ

※生産活動に従事しうる年齢の人口。日本では総務省統計局による労働力調査の対象となる15歳以上人口がそれにあたる。生産年齢人口は,さらに働く意志のない非労働力人口と働く意志のある労働力人口に分けられる。
出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

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筆者紹介

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講師 大久保 一彦


日本の将来のために創業・第二創業・イノベーションを支援する有限会社
代表取締役

10,000店舗を訪問、「反映の仕組み」を体系化 日本、フランス、アメリカなど1万店舗を実際に食べ歩き、 多くの飲食経営本を著す。 飲食店のもうけの構造を知り尽くした現場コンサルタント。 日本、アメリカ、欧州、1万店舗以上の店舗を訪ね、繁盛の秘訣を体系化し、「オオクボ式繁盛プログラム」を開発。損益分岐点を下げる仕掛けでは、月商400万円売れないと成り立たなかった店を月商180万円でも利益が出るよう指導し、成功させた。 (株)グリーンハウス時代に「新宿さぼてん」を惣菜店多店舗化に成功。独立後は、ハイディ日高、和幸、東和フードサービスなどの新業態開発やメニュー開発などを手掛け、地域密着店、老舗料亭やフレンチ・イタリアンの高級店等の運営から集客法までを一元的に指導。経営者の信頼を得る。 「行列ができる店はどこが違うのか」など著書24冊。

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