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社長のための「コラム&NEWS」
大久保一彦の“流行る”お店の仕組みづくり

93軒目 摘草という新しい時代の切り口

 産業革命以来、文明のエリアは拡大を続け、地球は人口増大が続いております。そのため、産業革命以降の世界は、文明を支えるため資源の争奪しあい、資源の浪費を繰り返し、その結果、地球の環境は大きく変わってしまったと言っても過言でないでしょう。そして、21世紀、これからの時代は、地球の現状を維持するということがテーマとなり、「資源を無駄にしない」という課題が私たちの食というビジネスにおいても求められるでしょう。
 資源を無駄にしないという意味合いを考えた場合、選択肢はいくつかあり、地球に悪いものを撒き散らかさない、今ある資源を有効活用するというのは、とても効果的な選択肢と言えるでしょう。

 かような事情を斟酌して、私が今最も注目しているのが野草です。野草は農業と違い、何もしなくても地面から生えてきますので、なんら資源を浪費することなく、いやむしろ、資源を有効活用することが出来ます。野草を使うということは、「おいしい、おいしくない」を超えて、非常にエコロジカルなのです。しかも、持続可能な方法です。

 私は、10年ほど前にフランスの著名な植物学者のフランソワ・クープランと出会い、その影響を受け、野草に興味を持ち、彼のパートナーシップを組んでいる世界のレストランを回り、「おいしくない」という野草の概念もすっかり変わりました。ここ数年は、彼のワークショップに積極的に参加して、彼の考えを理解するようになり、新しいスキームを考えています。
 私はフランソワと出会うまで、あまり草のことなんて考えたことはありませんでした。しかし、草に興味を持ってみますと、世界観が変わります。例えば、庭を見るとニラが生えています。あるいは、フランソワがワークショップでサラダに使っていた、カタバミがうじゃうじゃと力づよく、生えています。私の庭を見る限り、四季折々で色んな草が生えていて、考えてみれば食材の宝庫だと気づきます。「灯台下暗し」とはこういうことを言うのでしょう。

 フランス料理はもちろんフランスのワイン造りにおいては、テロワール(土壌)の重要性が価値観として共有されており、テロワールの表現をどうするかが課題になっております。野草は適地にしか生えませんし、その土が育む産物ですので、まさにテロワールそのものと言えるでしょう。今、ローカルというキーワードがありますが、まさに、地方創生の起爆剤になりうると確信しております。
 ということで、お世話になっている『平八茶屋』の園部さんの御世話になり、日本の摘み草料理のパイオニアの『草喰なかひがし』に定期的に勉強に行っております。

 今回は、摘草料理の第一人者である中東久雄(以下、久雄)さんの料理を通しての学びをまとめてみたいと思います。
 フランソワによれば、ヨーロッパも昔は野草を食べる習慣があったが、今は無くなってしまったと言います。確かに、プロヴァンスの標高1,200mくらいの山を歩いていますと、レタスの原種がレタスとは思えない姿で自生しておりました。食べるとレタスの味がして非常に感慨深いものがありました。野菜という形で商業ベースにのせるために肥大化させて、その代償として栄養価を落としたそうです。
 日本では野草というと多くの人は“山菜”とか“ハーブ”という言葉を想起すると思います。実際、私もそうでした。フランソワのワークショップに参加すると、野草の新芽がおいしいものが多く、新芽以外は毒があるものもままあることがわかります。私たちは春先に芽吹く新芽をおいしさと体のバランスを保つために食したのだと思います。
 久雄さんの言葉で印象的だったのは、「草というのは雪が降っていても、雪の下に草は生えているし、年中あるのです」という言葉です。確かに、植物は年中生えています。ちょうどこの間、秋に行った時は、キノコの季節で、珍しい松茸より希少と言われる香茸や赤やまどり茸(ポロチーニ)のようなキノコがいっぱい使われていました。そのポロチーニをネバネバしたソースにしたりして、とても面白かったです。印象的だったのは本モロコのおいしさ。野蒜が添えてありました。それと、鹿ですね。肉汁が溢れ、すばらしい焼き加減でした。

 そう言えば、北九州にある『ラ・パペリーナ』の大野さんが、カルボナーラにヨモギや野みつばを使っていましたが、大野さんの野草を採りいれたイタリアンはものすごく美味いです。どの季節にどこにどんな草が生えるか、そしてどう使うかを理解すれば、栄養価は野菜と比べものになりません。“野菜”と違い野草はタンパク質も豊富で栄養のバランスもいいです。

 ところで、前回の『草喰ながひがし』では、鳥のすき焼きのおいしさというすごい発見をしました。正直、これには驚きました。
『草喰なかひがし』の鳥のすき焼きは、久雄さんが、2月くらいからこの間行った11月まで、委託してひよこから育てたという長期肥育の鳥です。その鳥を内臓まで入れて、『中川一辺陶』にいらした人の窯を使って、白醤油で味付けしただけで焼き上げるすき焼きを提供していただきました。蒸し焼きにした山形県由来の京都産赤葱(葱の原種に近いものらしい)はクセ(葱くささ)がなくて鶏と相性がよかったです。
 出汁で伸ばした玉子でヒタヒタにしていただくのですが、これがまたおいしくて、食べ終わると最後にご飯を入れてくれまして「ひょっこりひょうたん島」とか言って出してくれるのですが、まあ雑炊のような、TKG、卵かけごはんのようで、料理の完成度が高く、至福の時を過ごさせていただきました。これだけで店が成立しそうなお料理でした。

野草のワークショップは、ブログのhttp://plaza.rakuten.co.jp/yumeakinai/diary/201407240000/ (2014年7月)から辿ってみてください。


草喰 なかひがし
京都府京都市左京区浄土寺石橋町32-3
電話 075-752-3500

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筆者紹介

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講師 大久保 一彦


日本の将来のために創業・第二創業・イノベーションを支援する有限会社
代表取締役

10,000店舗を訪問、「反映の仕組み」を体系化 日本、フランス、アメリカなど1万店舗を実際に食べ歩き、 多くの飲食経営本を著す。 飲食店のもうけの構造を知り尽くした現場コンサルタント。 日本、アメリカ、欧州、1万店舗以上の店舗を訪ね、繁盛の秘訣を体系化し、「オオクボ式繁盛プログラム」を開発。損益分岐点を下げる仕掛けでは、月商400万円売れないと成り立たなかった店を月商180万円でも利益が出るよう指導し、成功させた。 (株)グリーンハウス時代に「新宿さぼてん」を惣菜店多店舗化に成功。独立後は、ハイディ日高、和幸、東和フードサービスなどの新業態開発やメニュー開発などを手掛け、地域密着店、老舗料亭やフレンチ・イタリアンの高級店等の運営から集客法までを一元的に指導。経営者の信頼を得る。 「行列ができる店はどこが違うのか」など著書24冊。

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