社長のための「コラム&NEWS」
酒井英之の「Nロード経営法」

第9話 どうしたら理念は浸透するのか?

コーヒーショップはどこにでもあるが、スターバックスは、他に類のないコーヒーショップである。
それくらい差別化された状態まで主力事業を進化させる。
それがNロードのテーマです。

そのためには「理念」から差別化するべきだと前回号でお伝えしました。
スターバックスの理念のひとつは「居心地の良いサードプレイスを提供すること」です。
その考え方が従業員に浸透しているからこそ、あのような空間とサービスが生まれるのです。

逆に、理念やミッションが立派でも、それがお題目で終わってしまっては、選ばれる存在にはなれません。

そこで今回は、社長が理想とする理念やミッションをいかにして現場に落とし込むべきかその方法をお伝えします。

前回ご紹介したレクサス星が丘店は、無料の洗車サービスだけでなく、日常の中でもお客様に喜んでいただくために様々な、「プラスワンサービス」をしています。

例えば、オーナー様のお誕生日に、車のナビゲーションシステムにお祝いメッセージが出るようにする。

車の点検を済ませたオーナーがこの後夫婦で温泉旅館に旅行に出かけると聞けば、その温泉旅館に、オーナーが橈尺したら花束をプレゼントしていただくように手配する。

同社のミッションには「お客様を『ハグ』するおもてなしの心を提供する」という表現がありますが、それに忠実に、リッツカールトンのようなサービスを現場の担当者の判断で実施しているのです。

こうしたホスピタリティ溢れる従業員の行動は、夕礼時に皆の前で発表されます。
上司はその情報を報告書に書き、社長・役員にFAXします。

社長・役員は全店から送られてくるFAXに目を通し、会社が目指していることと現場で行われていることがマッチしていることを確認しているのです。

こうした報告の仕組みは、第8号に紹介した「日本一変わった新聞販売店」と言われるアウンズ・ヤナギハラにもあります。

同社のミッションは、「心を届ける、心を結ぶ」です。
そこで、自分が見たり聞いたりしたミッションに適う行動をA5サイズの用紙に書き、本部に提出します。

この用紙は「情報メモ」と呼ばれています。
「情報メモ」は行動した本人が書くこともありますが、部下から報告を受けた上司が部下の行動を伝えたくて書くこともあります。

本部では月に一度、情報メモを集計します。
そして、素晴らしい行動に関しては全従業員が参加する全体会議の場で紹介、シェアします。

また、年間を通して最も感動的な取り組みは全員が参加するパーティの場でDVD化されて上映されます。
そして「社長賞」や「ハートフル大賞」が贈られるのです。

こうした表彰やフィードバックが、従業員のモチベーションアップに繋がるのは言うまでもありません。

これらの行動は、現場で従業員のひとり一人が自分で考え自分で意思決定し行動に移したことです。
それが上司や社長に認められれば自分の判断力に自信が付きます。

すると、何事に対しても自分で行動を決められる主体的な人財が育つのです。

逆に言えば、優れた理念やミッションを掲げていても、現場の日々の行動に関して経営者が無関心であると、それはどんどん形骸化するリスクがあるということです。

大企業の多くで理念が形骸化している姿が見られますが、その原因は、社員ひとり一人の行動に、社長も部長も関心を寄せていないからでしょう。

すると、個々人の能力や頑張り度合いを測る物差しは「いくら稼いだのか?」だけになってしまいます。
その結果、利益のことしか頭にない人材が育ってしまうのです。

理念の浸透は、社員数が少ない中小企業こそ発揮すべき強みです。
その浸透は、社長がどれだけ従業員ひとり一人の日常行動に関心を寄せるかにかかっています。

ぜひ、それに基づいた従業員の日々の行動を集める仕組みを構築しましょう。そして、良い行動を素直に「素晴らしい!」と称える機会を作ってください。
理念で差別化する会社は人財で差別化する会社です。
主体性ある従業員が次々と育つでしょう。

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筆者紹介

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講師 酒井 英之

事業と組織のN字成長コンサルタント
(株)V字経営研究所 代表取締役

主力事業の業績が伸び悩む企業を次々と増収増益の組織へ進化させる実力指導者  ブラザー工業㈱に入社。ワープロ営業部に配属。市業績低迷が続く中、起死回生の商品開発の指令を受け、若手を中心にラベルライターの「P‐touch」を考案。この商品は今も、全米でシェア70%、国内ではトップシェアを誇るロングセラー商品に大成長。強い組織づくりの基礎を経験。情報機器メーカーへN字成長する一翼を担う。また、コピー機事業部では営業担当として売れない商品を売りまくり、優秀賞を7回受賞。コンサルタントとして独立、世界シェアNo.1の大企業から10人の中小企業まで、約400社の業績停滞企業における主力事業の再生指導・組織進化を手掛ける。シェア8%の商品が70%に躍進した例や、最後発から売り方を進化させ、No.1企業へ成長した例など、社長と組織を時代に合わせて進化させる独自の指導を行う。

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