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社長のための「コラム&NEWS」
大久保一彦の“流行る”お店の仕組みづくり

90軒目 ニューヨーク“Sushi”事情

 ちょうどその時、9月初旬、ニューヨークで鮨職人をしている関口さんが来日されて、『第三春美鮨』で食事をしておりましたら「トライベッカ・エリアでの開業が完全に決まった」という知らせがありました。関口さんはもともと『第三春美鮨』の長山一夫さんにご紹介をいただいたわけですが、「ZAGAT Survey New York(ザガット・サーヴェイ・ニューヨーク)」で常に上位にランクされている『Sushi Yasuda』で握っていた鮨職人でもあります。

 そんな知らせを聞いた数日後、予約困難なレストラン『Chef’s Table at Brooklyn Fare』の席を譲ってくれるという話がありました。急遽、2015年9月のシルバーウイークを使って、ニューヨーク事情を取材することにしました。

 今回の時期は、国連総会があるということで米国のオバマ大統領をはじめ、各国首脳がマンハッタンに集結した上、ローマ法王の訪米も重なり、プラザホテルからコロンバス・サークルのところまでは車が入れず、交通渋滞はとてもたいへんでした。しかし、とてもいい勉強ができたので、無理しても行ってよかったと思っています。

 アメリカに日本料理店や寿司店が増えたのは日本企業の進出が盛んで、接待需要が急増したバブルの時代です。そのきっかけとなったのが“プラザ合意”と言えるでしょう。
 しかし、バブルは崩壊して、日本企業の多くがニューヨークから次々と撤退していきました。もちろん、接待に支えられていた日本料理店や寿司店は撤退を余儀なくされ、どんどん消えていきました。

 ところが、この日本人の料理店の撤退によってアメリカでの寿司の発展が終わったと思うかたも多いと思います。しかし、実際はそうではなく、その反対の大きな発展につながります。その大きな原動力が、現地に残った厨房の裏方を支えていたメキシコ人、中国人、韓国人などが次々と寿司店を開いたことにあります。彼らは、今までの日本人の提供していた“寿司”の枠にとらわれず、現地の人の好みに合わせて、辛くしたり、胡麻油の香りをさせたり、好みを現地の人にあわせました。価格も日本人が経営していた店よりはるかに手頃にして、日本人以外の現地の人に支持されるようになっていきます。そして、“Sushi”という独自のスタイルになりアメリカ人に定着したのです。私が“Sushi”と敢えて書くのはそのような事情があります。

 一方、1990年代後半のトライベッカ・エリアにできた『Nobu』の成功により、“Sushi”店の経営は現地の高級レストランのシェフにも広がりはじめました。例えば、スーパーシェフ、ブーレーがやっている『Ichimura At Brushstroke』です。今回の目当ての店舗、『Chef’s Table at Brooklyn Fare』のシーザー・ラミレスシェフもこちらにいたそうです。

 ラミレスシェフは辻調出身なくらいでとても親日派です。彼はモダンフレンチのタパスを日本料理や鮨のエッセンスを加えて新しいカテゴリーのフレンチを築き上げ、見事、ミシュランの三ツ星レストランに格付けされています。

 日本の星付き鮨店のニューヨーク進出もささやかれており、今、ニューヨークの“Sushi”業界はとてもホットであると言えるでしょう。

 ところで、現在のニューヨークの高級“Sushi”店には共通した方向性というか傾向があります。それは、日本の鮨店のようなカウンターを作らないようにしていることです。前述の関口さんの話によれば、多くの店は日本人が握っているそうです。
 つまり、カウンターを作らず、日本人が握っていても、誰が握っているのかわからないようにしているのです。そのバックボーンには、お客様から見えない厨房で戦略的に考えられてレシピ化された“Sushi”が握られるという事情があります。
 なぜ、そうするのかはあくまでも私の推測にすぎませんが、こうすることで、英語のコミュニケーション能力がない日本人が“Sushi”職人として働くハードルを下げているのかもしれない。または、基本はセット売りにしている店が多いようで、ロスが出ないように注力しているのかもしれない。

 では、今回視察した『Sushi of Gari』を例に見てみよう。『Sushi of Gari』のグランシェフは杉尾雅利さんである。“雅利”さんの読み方を変えて“Gari”(がり)となっているそうです。

 早速、この系列の『Gari Tribeca』に行ってみました。角地にテラスのあるクローズドキッチンの店です。シグネチャー料理のランチ50ドル(チップ税別)を早速注文しました。各ネタを現地の人が楽しめるように意外な組み合わせのトッピングをして素材そのもので食べると言うよりはソースで食べるようにしているのが特徴と言えるでしょう。もう少し素材感があれば福岡の『たつみ寿司』に似ています。

 印象的だったのはトマトソースで火を入れたサーモン。脂がのったサーモンをトマトソースで火を入れるのが面白い。鮪の豆腐ソースやハラペーニョをのせたカンパチ、マッシュルームのソテイをのせた炙ったサゴチなど意外性ある組み合わせは勉強になりました。アレンジは無限にできるということを改めて学んだ次第です。

 今回、関口さんと現地の魚屋のNobuさんと『フルトン魚市場』を見学しました。ぱっと見は結構使えそうな魚がたくさんありましだが、Nobuさんによれば「南方の魚はおいしくない」と多くの魚が使えないとおっしゃっていました。ただ、関口さんは「アメリカで十分とは言えない地魚を活用した“Sushi”をやりたい」とがおっしゃっています。カウンターでのコミュニケーションを大切にしてお客様の好みの鮨を握る関口さんのスタイル。地魚を使うのはとてもハードルがあるのでしょうが、とても楽しみです。


 今回は、弾丸視察につき3泊5日で、後ろ髪をひかれながら、JFK空港を後にしたのでした。

 今年も、大久保一彦の店舗見学会を東京で開催します。『菊乃井』の村田吉弘さんや、『鮨よしたけ』の吉武親方や今、話題の『旬熟成』の跡部美樹雄さん、『グラニースミス』の関俊一郎さんなど話題の店が目白押しです。ぜひ、ご参加ください。

■大久保一彦のフードビジネス研究会

2015年東京 人気・繁盛店見学会
[12月7日~8日(1泊2日)]

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筆者紹介

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講師 大久保 一彦


日本の将来のために創業・第二創業・イノベーションを支援する有限会社
代表取締役

10,000店舗を訪問、「反映の仕組み」を体系化 日本、フランス、アメリカなど1万店舗を実際に食べ歩き、 多くの飲食経営本を著す。 飲食店のもうけの構造を知り尽くした現場コンサルタント。 日本、アメリカ、欧州、1万店舗以上の店舗を訪ね、繁盛の秘訣を体系化し、「オオクボ式繁盛プログラム」を開発。損益分岐点を下げる仕掛けでは、月商400万円売れないと成り立たなかった店を月商180万円でも利益が出るよう指導し、成功させた。 (株)グリーンハウス時代に「新宿さぼてん」を惣菜店多店舗化に成功。独立後は、ハイディ日高、和幸、東和フードサービスなどの新業態開発やメニュー開発などを手掛け、地域密着店、老舗料亭やフレンチ・イタリアンの高級店等の運営から集客法までを一元的に指導。経営者の信頼を得る。 「行列ができる店はどこが違うのか」など著書24冊。

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