社長のための「コラム&NEWS」
酒井英之の「Nロード経営法」

第7話 理念を現場の具体的な行動に置き換えよ

主力事業を進化させる。
それがNロードのテーマです。

進化には画期的な進化もあれば、徐々にその品質を上げていくうちに、いつしか誰にも追いつけないレベルに達する進化もあります。

とりわけサービス業は、お客様と相対するひとり一人の社員の行動一つがその会社のブランド力となります。

例えば、あなたが
「宅配便業者では、佐川が好きですか?ヤマトが好きですか?」
と尋ねられたら、あなたは何と応えるでしょうか?

このような質問をすると、こんな答えが返ってきます。
「ヤマトです。既定の集配時間が過ぎていても呼べば嫌な顔せずにすぐに来てくれたからです。」
「佐川です。いつも元気で楽しそうにしていて見ているだけでこちらが元気になるからです。」

非常事態はもちろん、日常での立ち居振る舞いもまた、彼らが選ばれる理由になっていることがわかります。
CSは、現場の社員ひとり一人にしか作れないのです。

よって、「もっとこうした方がお客様は喜ぶのではないか?」と気づき、実践行動に移せる従業員を一人でも多く育てることができた会社は、お客様に選ばれ続けるでしょう。

例えば、以下は、浜松市No.1新聞配達店の㈱アウンズ・ヤナギハラの社員の事例です。
同社は本業である新聞配達のほかに、野菜やお弁当の宅配も行っています。


■事例1 新聞をお部屋まで届ける

新聞の集金にお伺いすると、『おじいさんが足を怪我した』とご家族の方からお聞きしました。

新聞が大好きな方で、夕刊を届ける時にも、いつも外に出て待っていてくれています。

怪我をして、歩くのも大変だろうと思い、ご家族の方にお話をして、その日以後は夕刊をおじいさんの部屋にまで届けるようにしました。

部屋で待っていて下さるおじいさんの笑顔に、私もたくさんの元気をいただきました。



■事例2 かぼちゃを切ってさしあげる編

地元で採れた旬の野菜、かぼちゃをお求めいただいたお宅は、ご高齢のお独り暮らしのお客様。

「この硬いかぼちゃを切ることができるのだろうか…?」
お届けしたものの心配が先に立ち、玄関先で
「私が切ってさしあげましょうか?」
とお声を掛けてみると、大変喜んでくださいました。

「かぼちゃが食べたくなり買ったものの、最近は力が弱くなってしまってね。切る力がないから、声を掛けて頂けて本当に嬉しい」
とお客様。

包丁をお借りし切ってさしあげている間も、世間話が弾み、とても楽しい時間となれました。
これからも、野菜をお届けする時には、その方に合った声掛けをしていきたいと改めて感じました。



こうした行動は、上司の命令でも指示でもありません。
当然マニュアルにもありません。
自分で考えて、実践しているのです。

そのベースにあるのは同社の理念を反映した「心をとどける。心をむすぶ」という独自の考え方です。

自分たちの仕事は、単に新聞や野菜などのモノを届けるだけではなく、伝えたい人と知りたい人を結んだり作った人や発信したい人の想いを届けるのが仕事だというのです。

同社では、その考え方に基づいて実践した人は、その内容を上記のような「情報メモ」に記し、本部に提出します。
本部はそのメモを会議時に読み上げたり、オリジナルDVDに編纂したりして全員でシェアします。
素敵な事例には惜しみない賞賛を送ります。

事例のシェアを通して、理念を行動に移すことは具体的にどうすることなのかを、皆が学んでいきます。
そして、現場で困っているお客様を見つけたときに、自分で考え行動できる実践力を養っているのです。

どの会社も崇高な理念を掲げています。
しかし、理念がお題目にとどまり、現場の社員ひとり一人の行動に結びついていない会社ばかりです。

原因は、理念を具体的な行動に置き換えられないことです。
その置き換えは、理屈で理解するようなものではありません。
「これぞ理想的な行動である」という具体的な社内事例を知ることで、誰もができるようになります。

ぜひ、そのような事例をシェアする仕組みを作りましょう。
そして、社員の理念実践行動の経験回数を増やしましょう。
その積み重ねの中で、あなたの会社のブランド価値は、お客様の中で一層高まっていくでしょう。

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筆者紹介

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講師 酒井 英之

事業と組織のN字成長コンサルタント
(株)V字経営研究所 代表取締役

主力事業の業績が伸び悩む企業を次々と増収増益の組織へ進化させる実力指導者  ブラザー工業㈱に入社。ワープロ営業部に配属。市業績低迷が続く中、起死回生の商品開発の指令を受け、若手を中心にラベルライターの「P‐touch」を考案。この商品は今も、全米でシェア70%、国内ではトップシェアを誇るロングセラー商品に大成長。強い組織づくりの基礎を経験。情報機器メーカーへN字成長する一翼を担う。また、コピー機事業部では営業担当として売れない商品を売りまくり、優秀賞を7回受賞。コンサルタントとして独立、世界シェアNo.1の大企業から10人の中小企業まで、約400社の業績停滞企業における主力事業の再生指導・組織進化を手掛ける。シェア8%の商品が70%に躍進した例や、最後発から売り方を進化させ、No.1企業へ成長した例など、社長と組織を時代に合わせて進化させる独自の指導を行う。

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