社長のための「コラム&NEWS」
酒井英之の「Nロード経営法」

第2話 モノを売り込むな、未来を売り込め

新たな成長軌道を描くNロード経営第二弾は提案営業の進化系です。

一般的にお客様は、売り手から見れば面と向き合って「商品を売り込む相手」であり「商品を買っていただく攻略先」です。

しかし、買い手から見ればそんな営業は鬱陶しいだけ。モノだけならどこからでも調達できる時代です。

肝心なことは「調達すること」ではありません。その前に「一緒に考えてくれる」ことです。そして購入後に「最後まで面倒を見てくれる」ことです。

このことは、普通の人が自分のパソコンを購入するときと同じです。

買うことだけならネットで注文すればすぐできます。が、パソコンをネットで買うことはなかなかできません。どれが自分に相応しいかわからないし、アフターサービスがどうかも心配だからです。

そんなとき、目利き力のある人が、一緒に考えて選んでくれたら安心ですよね。購入後のアフターサービスも、すぐ対応してくれると確約いただけたら安心です。だから、パソコンはネットではなく店頭で選ぶのです。

このときのパソコンを買い手と売り手の関係は面と向き合った関係ではありません。横に並んで、同じ方向を見つめる関係です。お客様にはこの関係が一番気持ちの良い関係なのです。

そのことにいち早く気がついた菓子の原材料商社のA社は、菓子メーカーへの営業スタイルを変えました。

それまでの同社は、「こんにちは。何か御用はございませんか?」を繰り返すいわゆる「御用聞き営業」を展開していました。しかも朝訪問して受注し、夕方訪問して受注するという一日2度訪問を当たり前にやっていました。

が、この訪問受注のスタイルを繰り返すだけでは、お客様がヒット商品を出さない限り成長は望めません。

そこで同社は、自社の原材料を用いて菓子の試作品を作り、「こんなお菓子を作られてはいかがでしょうか?」とお客様に提案する営業を始めました。自らがお客様のヒット商品作りをお手伝いしようというのです。

ところが、当初はお客様から相手にされませんでした。「菓子作りに素人の商社に菓子が作れるものか。われわれメーカーを馬鹿にしてもらっては困る」と突き放されてしまったのです。

メーカーがそう言うのはもっともです。試作室と違い、お菓子は機械で作られます。温度や速度の制約があるため、試作室で創るお菓子がそのまま再現できるとは限らないからです。

しかし、同社はそんなことでは諦めませんでした。温度等による物性の変化を勉強しながら、断れても断られても提案を続けます。お客様の未来を考えることを楽しいと感じていたからです。

すると、お客様がだんだんと
「A社は面白い提案を持ってくる商社だな。採用するかはともかく、見て聞くくらいはいいだろう」
「君は本当にお菓子が好きなんだね。この試作品からその想いが伝わってくるよ」
とA社の提案を評価してくれるようになりました。

やがて、提案した試作品やその原材料が菓子メーカーに採用されるようになりました。そして、その採用実績から、より多くの菓子メーカーがA社の開発力に興味を示すようになったのです。

こうなると、A社のミッションそのものが変わります。それまでは文字通り菓子の原材料を売る商社でした。が、試作品を提案するようになってからは「菓子メーカーの開発部のパートナー」となりました。向き合って売り込む関係から一緒に未来を創る関係に変わったのです。

すると思いがけないことが起きました。欧州の原材料メーカーが日本の販売代理店としてA社を選んでくれたのです。
「A社はわが社の商材を日本の菓子メーカーに提案する力が一番強いから」
がその理由でした。

そうした独自商材の魅力もあって、A社の業績は現在も拡大を続けています。お客様にとってA社は、自分の未来を共に創るかけがえのないコラボレーションパートナーなのです。

そんなA社の成功の秘訣を一言でいえば、「お客様の未来を考え、売り込んだこと。そして、一緒にその未来を現実にしたこと」です。

「どうしたら売上が上がるのか」で行き詰ったら、商品のことはそっと横に置きましょう。そして、お客様の理想とする未来を思い描いてみましょう。

どんな景色が思い浮かびますか?そこにあなたが役に立てることはないでしょうか?それを見つけることから、新しい提案が始まるのです。


2015年8月の公開セミナーのご案内


『Nロード経営法』【日本経営合理化協会様主催】

当社が古いやり方に縛られ、イノベーションを起こせずに伸び悩む企業のN字成長をお手伝いするときの独自ノウハウを、昨年から一層バージョンアップして1日のセミナーでお伝えします。

開催:平成27年8月7日(金) 10時~17時
場所:目黒雅叙園

下記で案内しておりますので、興味のある方はご覧ください。
http://jmcasemi.jp/seminar/seminar.php?CONTENT_ID=956

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筆者紹介

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講師 酒井 英之

事業と組織のN字成長コンサルタント
(株)V字経営研究所 代表取締役

主力事業の業績が伸び悩む企業を次々と増収増益の組織へ進化させる実力指導者  ブラザー工業㈱に入社。ワープロ営業部に配属。市業績低迷が続く中、起死回生の商品開発の指令を受け、若手を中心にラベルライターの「P‐touch」を考案。この商品は今も、全米でシェア70%、国内ではトップシェアを誇るロングセラー商品に大成長。強い組織づくりの基礎を経験。情報機器メーカーへN字成長する一翼を担う。また、コピー機事業部では営業担当として売れない商品を売りまくり、優秀賞を7回受賞。コンサルタントとして独立、世界シェアNo.1の大企業から10人の中小企業まで、約400社の業績停滞企業における主力事業の再生指導・組織進化を手掛ける。シェア8%の商品が70%に躍進した例や、最後発から売り方を進化させ、No.1企業へ成長した例など、社長と組織を時代に合わせて進化させる独自の指導を行う。

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