社長のための「コラム&NEWS」
大久保一彦の“流行る”お店の仕組みづくり

83軒目 福岡から日本全国へ!

 最近、私が主催しています会、『大久保一彦の繁栄会』に会員をどんどん紹介していただいているありがたいオーナーが博多におります。『パロマ・プラス・ワン』や『魚男』という人気店を経営している森智範さんです。森さんとは私の師匠である竹田陽一氏の事務所で開催したセミナーが縁で、今では会員を超えたパートナーとしておつきあいさせていただいております。
 ちなみに、毎年恒例となっている『日本経営合理化協会主催の店舗見学会』の2014年の開催は福岡、佐賀、長崎と回りましたが、その見学先にもピックアップしております。

 森さんはテレビにもよく出てくる有名シェフの右腕として活躍されたこともあり、店舗のプロデュースが得意で、有名店などからも依頼が絶えません。
 今回は、私もモデルチェンジに関わった『パロマ・プラス・ワン』をご紹介することにしましょう。

 『パロマ・プラス・ワン』は前進の『パロマ・グリル』の時代から十年以上にわたり繁盛している福岡の経営者に一目を置かれる店です。
 『パロマ・グリル』の時代は、タワーになったオニオンがトレードマークのハンバーグや立体感のあるバーニャカウダーを看板商品に、ハイセンスなレストランを求める地元客に支持されてきました。雑誌やメディアの掲載も多く、福岡に浸透した洋食店でした。

 しかし、名前が広まると、情報に敏感な人から情報の受け手の人が看板料理のバーニャカウダーやハンバーグを求めてやってくるようになりました。
 情報の鮮度の劣化を危惧した森社長は2013年に“ガストロ・バル”をコンセプトに『パロマ・プラス・ワン』へフルモデルチェンジを決意しました。
 私はこの話を持ちかけられて、そのイメージする料理を食べながらブレーンストーミングをすることになりました。
 まだ、試作だけあって、液体窒素やパーゴジェットなどの最新調理機器を使う料理は拷問のような料理もありました。特に、16番くらいの大きさのデッシャーでとったポーションの大きい牡蛎のジェラートには絶句しました。
 しかし、料理を食べながらリラックスしたブレストというのはすばらしく、イマジネーションが広がります。私は象徴的な“バーニャカウダー”が多くの居酒屋でもラインナップする定番となり、中には“食べ放題のお通し”となっていることを指摘しました。すると、森さんもそう思っていたのでしょう「いい方法はないですか?」と森さんから返ってきました。
 森さんとは星付きレストランを一緒に回る中ですので、森さんならわかるなと思い、「世界の繁盛店をみると複雑な調理プロセスをして野菜を一皿に盛り合わせるのがトレンドだ」と話しました。「例えば、一緒に行った神保町の『傳』のサラダ、これは煮たり、揚げたり、酢漬けにしたり、ピュレにしたりと複雑な調理をして一皿に盛り込んでいますが、このコンセプトは、『ミッシェル・ブラス』のガルグイユと同じですよ」と話した。
そんな話に森さんは反応して、(ここからは対談方式で)

:ということは…
:そう、ガルグイユをやったらどうでしょう。
  あれは先行調理ができるので予約さえ入れていただければ
  オペレーションは楽ですよ。
:でも、あれって、一品での完成度が高すぎませんか?
:確かに、大阪の『ハジメ』のように大皿にすると高級感が出過ぎますね。
  …(考える)
  わかりました。一晩考えさせてください。

 私はホテルに帰り、お風呂でリラックスしながら、『ハジメ』のような料理屋の一皿をカジュアルな雰囲気に合うようにどうしたらできるかを考えました。
 そして、浮かんだのが無礼講での中国料理店でのターンテーブルを回すシーンでした。
「ぐるぐる回る様はまさにマナー知らずの人や無礼講の場を盛り上げるツールにぴったり。カジュアルな雰囲気に合うな」
 翌日、早速提案。森さんは、「ターンテーブルってどこで売っていますか?」
と尋ねてきたので、早速、ネットで検索しました。しかし、いいものはありません。
 そうなんです、いいものなどないのです。いいものはつくるものであり、だからこそ真似されません。私は、このプロセスでヒットを確信しました。メラニンの皿のようなターンテーブルに盛り付けることが決定しました。

 そして数週間後、福岡を訪問すると、プロトタイプができていました。
60センチの白のターンテーブルは設計者の私が見ても「おおっ」と思うものでした。
 しかし、ここで、「ポーションの調整が課題だな」と思いました。というのは、ガルグイユのモデルチェンジをするターゲットの料理であるバーニャカウダーを食べたときに、「お腹がいっぱいになり、他の料理を食べるどころではなくなる」というデメリットを内在していることに気づいていたからです。この盛り付けだと、同じことになりかねない。
 ガストロバルの良さは、高級店で出てくるような料理のエッセンスをオマージュした皿を多皿で提供することにあります。そして、カジュアルラインのプライスゾーンに料理をいかにインスパイヤして落とし込むかが大きな課題です。
その阻害要因にポーションが大きい大皿はなりうるのです。


 この「農園のメリー・ガルグイユ」はモデルチェンジに見事成功して、森さんは時の人となったのです。2014年7月の『近代食堂』の表紙も飾り、森さんの勢いはますます増しています。


パロマ・プラス・ワン
福岡市中央区今泉1-3-13

電話 092-715-0346
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筆者紹介

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講師 大久保 一彦


日本の将来のために創業・第二創業・イノベーションを支援する有限会社
代表取締役

10,000店舗を訪問、「反映の仕組み」を体系化 日本、フランス、アメリカなど1万店舗を実際に食べ歩き、 多くの飲食経営本を著す。 飲食店のもうけの構造を知り尽くした現場コンサルタント。 日本、アメリカ、欧州、1万店舗以上の店舗を訪ね、繁盛の秘訣を体系化し、「オオクボ式繁盛プログラム」を開発。損益分岐点を下げる仕掛けでは、月商400万円売れないと成り立たなかった店を月商180万円でも利益が出るよう指導し、成功させた。 (株)グリーンハウス時代に「新宿さぼてん」を惣菜店多店舗化に成功。独立後は、ハイディ日高、和幸、東和フードサービスなどの新業態開発やメニュー開発などを手掛け、地域密着店、老舗料亭やフレンチ・イタリアンの高級店等の運営から集客法までを一元的に指導。経営者の信頼を得る。 「行列ができる店はどこが違うのか」など著書24冊。

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