社長のための「コラム&NEWS」
大久保一彦の“流行る”お店の仕組みづくり

74軒目 奇跡の復活を遂げた30年以上続く老舗

 企業30年説というように、歴史は必ずしも商売に味方するとは限らない。こと外食産業となると、30年前の外食産業は石油ショックにより人・もの・金が集まり右肩上がりの市場成長の真っただ中にある異常な時代だったと言えるだろう。その恵まれた環境を理解して、それなりのポジショニングとブランディングができていなければ、市場が成熟、縮小へと向かっている今日、消えゆくのは世の常かも知れない。今回のコラムは、そんな逆境を乗り越えて奇跡の復活を遂げた福岡市は今泉にある面白い店を紹介しよう。

 2012年07月18日、夜パソコンを開くと買い物カゴに依頼が入っていた。携帯電話の番号が入っていたので、早速依頼者に電話をした。私の事務所のポリシーは、自店の未来のために自力でやっていけるようになるコンサルをすることだ。そのため、年一回は訪問指導をするが、基本は店舗改善のためのソースを音声CDなどやブログ、Facebook、食べログの情報発信を通じて提供して、疑問点に答え、チョイスが必要な場面でアドバイスをするというスタイルにしており、依存型の人には向かない。
 今回紹介する『Milky Way』の熊谷さんとお電話で事情を伺っていて、とても大変そうだったが、なぜだか「なんとかなるな」と言う手ごたえがあった。早速、スケジュールの空き具合を見てすぐに福岡までの旅を手配した。

 店を訪れると、おしゃれでムードのあるダイニングバーであった。場所も国体通りの今泉バス停付近と立地もすばらしかった。料理を試食するとこれも「なぜ流行らないかな」という料理のレベルですらあった。


 熊谷さんから店の概況を聞いて、この店が苦戦している理由がわかった。ひとつは、オムライスが評判になりオムライスのイメージが強くついてしまったことだ。そのため食事需要の店のイメージが強まり、徐々にパスタ、ピザなどに広げ、お酒を飲む比率を下げてしまったことがわかった。


 もうひとつが、立地はいいがセットバックした物件のために、集客するための媒体が必要となるのに、ぐるなびなどのメディアをやめてしまったことだ。新規客に知らしめるきっかけがなければ、持ち客を回すことになり、先細りする。 メディアを使っていて新規客の来店はあったが、費用がかさんだのでやめたとのこと。これがより苦戦していった理由だが、メディアの費用対効果とお客様が増えていないことは分けて考えるべきである。

 というわけで、のりかかった船故、この状況を打開するため、強みを生かしつつ独自性あるコンセプトを提案することになった。それが、“オムライスがおいしいワイン食堂”だった。オムライスという食事需要から、オムライスで〆るワインバーというイメージに変更したのだ。
 しかし、このためにワインにこだわっているように見えなければならない。ソムリエがいないこの店でできるのか…そして、考え出したのが、ワインはフランス産のみという路線だ。そして、どのワインも500円~700円引きで500ccのカラフェで提供できるようにして、目の前で抜栓して提供するようにした。


 また、料理もワインビストロにふさわしいとんがりを出すため、看板商品にはフォアグラ串を入れ、フレンチテイストの洋風串を一つの切り口にして、ワインのあてになるビストロ料理の前菜を入れた。そして、オムライスで〆るという流れを作った。店側もコースの〆にはデカメニューとなる“お祭りステーキ”を考案してくれた。さらには、ぐるなびには思い切って以前以上にお金をかけ、メディアの入口を増やして、一等地に面していて雰囲気がいいという宴会需要に応えられる店づくりをした。そして、店はどんどん良くなったようだ。まさに奇跡の復活。


 一年後、店にお客さんと食事に出かけたが、オムライスのデミグラスソースがパワーアップしておいしくなっていた。聞けば、牛筋の量を増やしたそうだ。さらに、「今年の12月は1000万円を目指します!」とのこと。そのひとことがとても嬉しかった。
 先日、福岡でセミナーがあって、お疲れさん的な打ち上げに『Milky Way』をチョイスしたが評価はすこぶる良かった。こういう店にぜひともがんばってもらいたいものである。


 店の強みを時代に合わせてどうブラッシュアップするか、その大切さを再認識した出会いであった。
Milky Way
福岡県福岡市中央区今泉2-5-24 権藤ビル 1F
電話 092-751-4577
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筆者紹介

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講師 大久保 一彦


日本の将来のために創業・第二創業・イノベーションを支援する有限会社
代表取締役

10,000店舗を訪問、「反映の仕組み」を体系化 日本、フランス、アメリカなど1万店舗を実際に食べ歩き、 多くの飲食経営本を著す。 飲食店のもうけの構造を知り尽くした現場コンサルタント。 日本、アメリカ、欧州、1万店舗以上の店舗を訪ね、繁盛の秘訣を体系化し、「オオクボ式繁盛プログラム」を開発。損益分岐点を下げる仕掛けでは、月商400万円売れないと成り立たなかった店を月商180万円でも利益が出るよう指導し、成功させた。 (株)グリーンハウス時代に「新宿さぼてん」を惣菜店多店舗化に成功。独立後は、ハイディ日高、和幸、東和フードサービスなどの新業態開発やメニュー開発などを手掛け、地域密着店、老舗料亭やフレンチ・イタリアンの高級店等の運営から集客法までを一元的に指導。経営者の信頼を得る。 「行列ができる店はどこが違うのか」など著書24冊。

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