社長のための「コラム&NEWS」
大久保一彦の“流行る”お店の仕組みづくり

55軒目 ニューヨークで一番ホットなマジソンスクエアガーデン

Eataly (ニューヨーク)


 私はここ十数年Wholefoods Marketをおいかけてきた。その一方でフランスやアメリカにある星付きの高級店もおっかけてきた。今回は、その両者の良さが融合したマンハッタン一、ホットな店、Eatalyを検証しよう。
 
 私がコンサルタントとして独立した1997年代後半はフィル・ロマーノ氏がダラスにイーチーズを作ったころだった。ちょうどそのころアメリカでは女性の家庭回帰現象と人口の南下現象が起こっていた。
 イーチーズができる少し前、家族団らんに向けた伝統的な家庭料理であるローストチキンを提供して「ボストンチキン」が急成長していた。何度となく上場外食チェーンを作ったロマーノ氏は、ダラスに高級スーパーとレストランを融合したコンセプトの店を作った。これが大ヒットし、日本からも視察する業界人が多く訪れていた。ダラスのあと、ヒューストン、アトランタ、ニューヨークに二店舗と快進撃は続いた。
 しかし、人口の南下現象によるおいしい店不毛の地での大成功と裏腹に、もともとゼイバー、エリ・ゼーバー、ディーン&デルーカ、郊外にシュチュー・レオナルド、ウエッグマンをひかえるマンハッタン出店は成功の兆候が見えず、その勢いは急降下した。
 高級食材を取り寄せるという手法は、ロハス志向の時代の勢いに呑みこまれていった。「よいものをひろめることはいいことだ」というミッションでエンゲージメントのリンケージをはかるホールフーズは快進撃を続けた。コロンバス・サークルにあるタイムワーナーのホールフーズを見たときに、「この勢いに対抗できるものはない」とすら私は思っていた。
 
 しかし、そうではなかったようだ。十数年前より洗練されてエキサイティングになって、また、新しい流れが始まった。
 
 マジソンスクエアガーデンに行列ができるハンバーガー屋がある。グルメハンバーガーの「Shake Shack」だ。ユニオンスクエア・カフェで名高いダニー・メイヤーのハンバーガー屋だ。土日になると行列はパワーアップして30分以上も並ぶことになる。
 しかし、「Shake Shack」に並んでいることを楽しんでいる。一番高いハンバーガーをドリンク、ポテト付きで買うと15ドル弱になるが、ホールフーズに対抗するレストランにとって大切なのは、価格ではないということだろう。
 少し下るとユニオンスクエアがあり、その途中に「グラマシー・ターバン」というエキサイティングなレストランがある。ザガットのポピュラーレストランの三本指に入るこの店、予約がとれないが、決して安いレストランではない。
 
 そして、もっともエキサイティングさ一番感じるのが、Eatalyだ。イタリーは代官山にもあるが、マンハッタンのイタリーは雰囲気があまりにも違う。トロントのマルシェのエや日本の割烹料理屋キサイティングさ、ディーン&デルーカの洗練された雰囲気、ゼイバーの品質と雑多な雰囲気、サンセバスチャンのバルのような情緒、このような多機能が集約されている。このような要素に鑑み、リーテイル&レストランのハイブリッドと称される。まさに、十数年前にロマーノ氏がやろうとしていたことではないかと気づかされる。


 イタリーの飲食ゾーンはいくつかの要素に分かれる。まず、高い止まり木のようなテーブルでタパスを立ち飲みで楽しむことができる。ワイングラスを片手に、イタリーが提供する生ハムやチーズやワインなどの品質の高い食材を使った料理を試食感覚で楽しむことができる。


 カウンターにすわれば、野菜料理、魚料理など各専門ブースがある。こちらでも、前菜、メインを楽しむことができる。奥にあるパスタのコーナーはいつも人気だ。そして、スイーツのコーナー、ジェラートのコーナーがある。


 レストランは土日には料理教室を行う。イタリーはあくまでも、食の提案をしているのだ。食事をするとレシピが渡される。顧客教育というエンゲージメントを楽しさの探求という入口から誘っている。私が思うに、代官山が流通に近いスタンスであるのに対して、レストランに近いスタンスであるように思う。
 その雰囲気が、土日には歩くことができないほどの人を引き寄せる。決して安いとは言えないが、ちょっと立ち寄ってみたい何かがある。レストランではない、しかし、高級グローサリーでもない、オーガニックスーパーでもない。あるのは、エキサイティングさとそこに一人でも感じることができる楽しさなのだ。

 人は生きるために食事をする。しかし、それだけはない。「食は生活を豊かにする文化だ!」イタリーは生産年齢人口の激減でマーケットのが縮小するこれからの食のマーケットに一石を投じているような気がする。

「Eataly」
200 5th AVENUE NEW YORK, NY 10010
Entrances on 5th Avenue and 23rd Street


(→公式サイト)

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筆者紹介

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講師 大久保 一彦


日本の将来のために創業・第二創業・イノベーションを支援する有限会社
代表取締役

10,000店舗を訪問、「反映の仕組み」を体系化 日本、フランス、アメリカなど1万店舗を実際に食べ歩き、 多くの飲食経営本を著す。 飲食店のもうけの構造を知り尽くした現場コンサルタント。 日本、アメリカ、欧州、1万店舗以上の店舗を訪ね、繁盛の秘訣を体系化し、「オオクボ式繁盛プログラム」を開発。損益分岐点を下げる仕掛けでは、月商400万円売れないと成り立たなかった店を月商180万円でも利益が出るよう指導し、成功させた。 (株)グリーンハウス時代に「新宿さぼてん」を惣菜店多店舗化に成功。独立後は、ハイディ日高、和幸、東和フードサービスなどの新業態開発やメニュー開発などを手掛け、地域密着店、老舗料亭やフレンチ・イタリアンの高級店等の運営から集客法までを一元的に指導。経営者の信頼を得る。 「行列ができる店はどこが違うのか」など著書24冊。

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