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社長のための「コラム&NEWS」
今井繁之の 「上司のためのホウレンソウ」

第13話『成功する日系企業の条件』

 先般、テレビ東京の「ガイアの夜明け」で、中国に工場進出した日系企業が中国人従業員との扱いを巡って様々なトラブルに遭遇して困っており、南富士産業の社長である杉山さんという方にコンサルティングを依頼している姿が紹介されていた。
 番組内で「退職率が高い」、「指示されたこと以上はやろうとしない」、「お金(給与)が第一で、賃上げ要求がきつい」といった中国人従業員に対する現地幹部の悩みが語られ、それに対して杉山さんから現地幹部にとっては耳の痛い指摘がされていた。
 番組内で民族が違うので考え方が異なり、信頼関係を築くのは容易ではないということが語られていたが、民族が違うから、異文化の人達だからうまくいかないということもあるかもしれないが、それだけではないような気がした。
 中国に進出した日系企業がすべて現地社員との軋轢で悩んでいるかというとそのようなことはなく、離職者だってそんなに多くないところがある。
 この「ガイアの夜明け」を見ながら、中国に限らず異文化の人達を雇用しながらうまくいっている企業は何か工夫があるのではないかと思った。

 私自身は異文化の人達と一緒に仕事をしたという経験はないが、私なりにどうしたらうまくいくかと考えてみると、それはそれほど仰々しいものではなく、次に述べるような心掛けで異文化の人達と接したら、それは可能ではないかと思う。

 一つ目としては彼等外国人従業員をパートナーとしてみなすことである。
 パートナーとしてみなすということは彼等を自分が使っている人ではなく、自分の仕事を手伝ってくれる人であるとみなすことである。
 自分達だけで何でもできるわけではないので、彼等にお手伝いをお願いしているのだと思えば同等に扱うべきであるという考えになるのではないかと思う。
 そういう考え方をすれば、ランチには自分達と同じものを彼等にも出すべきだということになる。
 パートナーとしてみなしていれば自分達だけ美味しい料理を食べて、彼等にはお粗末な料理を提供するということはできない。
 たまたま「ガイアの夜明け」で現地社員用の社員食堂と日本からの赴任者の社員食堂を分けているのを見たので、食事を例に出したが、差別化は食事に限らない。
 職務遂行能力のように明らかに差を付けられても納得がいくものを除いて、そうでないもので差別されることは差別された側にとっては気分のいいものではない。
 すべてを同一にしなければならないということではないが、民族が違うという理由だけで差別するということでは彼等の共感を得ることは難しいと思う。

 二つ目としては雇用した彼等に対して正当な処遇をすることである。
 現地の人だからといって、一段と低く処遇することなく、能力の高い人はそれなりの給与を出し、職位を与える。
 人は誰も自分より明らかに能力、見識の低い人から指示・命令を受けたいとは思わない。 組織内で働いている人間にとって、一番つらいことは自分より技術・見識が明らかに劣る人の下で部下として仕えければならないことである。短期間なら我慢できても長期ということになると、どうしても不満が出てくる。
 日本人だからという理由だけで高い給与、高い職位を与えていると必ず不満が出る。
 高い給与、高い職位を与えるのであればそれなりの人材を現地に派遣しなければいけない。そうでないと現地の人は指示には一応従うものの面従腹背に徹して好結果は期待できない。
 優秀な人材を派遣するのが難しく、現地の人の方が派遣された日本人より技術・見識が高ければそれなりの処遇をするべきである。そうでなければ有能と目される現地の人達の定着率を高めることは難しい。
 以前、私がお伺いした日系企業で現地社員の人達とその会社の最高責任者である総経理の懇親の場に同席したことがある。
 その席で、現地社員から「企業内研修は大いにやってほしい」という声があり、総経理は「その研修を受けたらどうする?」と発言者に質問した。そうしたら「ライセンスをもらったら隣の会社に売り込みに行く」というドライな発言があった。総経理が「なぜ?」と聞くと「ウチの会社ではどんなに能力が高くても我々をトップマネジメントに引き上げようとしない。トップはいつでも日本から送り込まれてくるから、私どもはこの会社には長くいたくない」と率直な意見を言う。私はそれを聞いてなるほどと納得した覚えがある。 技術・見識の差で差別されることについては納得しても民族が異なることで差別されることには納得しないはずである。

 三つ目としてはきつい、あるいはつらい作業に従事することをお願いした場合、お願いした側もそれに見合った対応をすることである。
 お金(給与)を出すのだからきつかろうが、つらかろうが働くのは当たり前という考えではなく、きついこと、つらい仕事に従事してくれる人に同じ人間として惻陰の情を持つことである。
 きついこと、つらいことを指示して、指示した側が腕組みをして監視していれば、相手は威圧を感じて指示された仕事はするが、それ以上頑張ろうという気持ちにはならない。 現地の人にシフト制をお願いするのであれば、一番きついシフトの時間にも管理・監督する日本人を置くべきである。
 もちろん、現地の優秀なスタッフにその任務を委ねるのは構わないが、自分達はきついことは回避して楽をしていると思われたら現地の人はそれを見抜いて、当然のように手抜きをすることになる。
 しかし、仕事に対する熱い思いを語ると共に時には一緒になって汗を流し、長時間の労働を共にする、そして、作業の途中、あるいは作業終了後、きついこと、つらいことに従事した人に対しては心からそのご苦労をねぎらい、感謝の意を表せば、さらに頑張ろうという気持ちになるはずである。
 「よくやった。ありがとう。心からお礼を言うよ」といった言葉があれば、人は意気に感ずるものである。
 金銭的な見返りがなければ人は動かないと思われがちであるが、金銭的見返りがなくとも、指示する側、指示された側双方に信頼関係ができていれば人は金銭的な報酬なくとも気持ち良く動くものである。

 四つ目としては相手の言い分(意見)に真剣に耳を傾けることである。
 こちらからの要望に対して、育った環境、受けた教育が違うので、受け止め方が異なり、賛同が得られないことがあるかもしれない。
 そうかといって、反対意見に対して、「わがままを言っている。雇用されているのだからあれこれ要求するのはけしからん」といって一蹴することなく、色々な意見に対して、度量を大きく持って、彼等の言い分に耳を傾けるべきである。
 こちらの要請に対して納得がいかないと言って来た時は、彼等の主張の中にも理があれば、それはそれで受けいれる努力をする。そうかといって、何でもかんでも彼等の言うとおりにしなければならないわけではなく、受け入れられるものは受け入れ、そうでないものについては、なぜ受け入れるのが難しいかを理路整然と話して、彼等の納得を得る努力をしなければいけない。
 価値観を同一にするのは難しい。育った環境、受けた教育の違いによって物の考え方に隔たりが出ることは十分ありうる。
 しかし、その隔たりもお互いの主張に真摯に耳を傾け、その主張に理解を示すと共に当方の主張の意のあるところを懇切丁寧に説明していけば合意を得ることはできるはずである。

 これ以外にも必要なことはあるかもしれないが、この四つが実行されれば、私は雇用する側と雇用される側に信頼関係が構築できると思う。
 信頼関係がないところで、「今は十分お支払いできないが、いつかはもっと出すから辛抱してくれ」、「ノルマをさらに上回るように働いてくれ」と要望しても、それに応える働きをしてくれるはずはない。

 前述したことは異文化の人達と共に仕事をする上だけの留意点かといえば、決してそんなことはなく、組織として、複数の人が一緒になって仕事に取り組む上で共通な留意事項であり、民族が異なる、異ならないに関係ないかもしれない。
 国籍や人種が違うからといって、独自なものがなければいけないということはなく、前述したような留意点を赴任する方々が共通に持ち合わせて、現地の人達に接すれば、必ずや信頼関係は構築できて、同一の目標に向かって前進できると思う。
 現実はそんな甘いものではないとお叱りを受けるかもしれないが、現地に溶け込んで、現地の人達の快い協力を得て、成功している企業は赴任した幹部の皆さんがこのようなことを実践しているからではないかと思う。


 

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筆者紹介

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講師 今井 繁之

シンキングマネジメント研究所代表

社内・お客様に「報告・連絡・相談」を徹底している会社は、この逆境にあっても、業績が長期安定することを長年の指導経験から実証。
リコー・ソニーに勤務時、論理的問題解決法であるKT法の社内指導を手懸ける。その後、1991年、シンキングマネジメント研究所を設立し独立。指導実績は、キーエンス・シャープ・コープこうべ・NTTデータ・リクルート・伊勢丹…等の企業で、年間1000人を超える社員・幹部に独自の問題解決法TM法を教える。 特にeメール時代の「報告・連絡・相談」の指導は大好評。著書「頭を使ったホウレンソウ」、DVD「営業マンの報告・連絡・相談」(弊会AV局刊)

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